2008年11月30日日曜日

50 million pounds




最近のロンドンは日も短くなって、かなり寒くなってきた。朝はやっと8時頃から明るくなり始め夕方は3時頃からすぐに暗くなるので一日が短く感じる。毎日曇りや雨でここ数日太陽を見ていない。おまけに外は冷蔵庫の中を歩いているように寒いので何処かへ出かける気にもならない・・・・・・
久しぶりに昨日はナショナルギャラリーに出かけ、先日から話題になっているTitian(ティツィアーノ)の名画を見にいった。最近話題になっている話で長らく展示されていたルネッサンス期のイタリア画家ティツィアーノの名画「Diana and Actaeon」がどうやらナショナルギャラリーから流出することになるらしい。この作品はスコットランド国立博物館とロンドンナショナルギャラリーに長期で委託展示されていたらしいが、実は個人の伯爵所有のもので、何かの理由で本人が売却したいらしい。しかしその金額は50万ポンド(約75億円)なので半端ではない。すんなり美術館が購入しようと思ってもそう簡単には行かないはずだ。購入先が決まらない場合はオークションとなり、何処の誰の所に行くか分からない事になるだろう。そのため、みなさんの名画で国民の美術館なので、この作品を救済して今後も何時でも無料鑑賞出来るようにしましょうという事だ。そのためイギリスの沢山のアーティストも賛同してキャンペーンを行いながらその救済募金を行っている。このキャンペーン展示も11月末から12月14日まで延期され寄付金を毎日募っているという訳で、年末になんとも英国らしい話だ。その後は気になっていたRoyal Academy of Artsで行われているByzantium 330-1453の展覧会を見に行った。

2008年11月1日土曜日

Rothko



最近のロンドンは凄く寒くなってきた。先日はまだ10月だったのに霰や雪が降り急激に温度が下がってきて真冬なみだ。もう外に出るときにはダウンにニット帽、手袋をしている。
久しぶりにTate Modernに出かけた。春にテートメンバーになったので、どこのテートも一年間何回企画展を見に行っても無料だ。(企画展は通常無料ではなく10ポンド前後のチケットが必要)現在Mark RothkoとブラジルのコンセプチャルアーティストのCildo Meirelesの展覧会が行われている。また吹き抜けのエントランスにはDominique Gonzales-Foersterの巨大なインスタレーションがある。ルイーズ・ブルジョワやアレクサンダー・カルダーなどの巨大立体作品を模してさらに巨大にし、一見するとスチールだが実はプラスチックの様な樹脂素材で出来ている。巨大な映像スクリーンや沢山の二段ベットと絡まって、子供達には大人気だった。
ブラジルのアーティストCildo Meirelesの会場はインスタレーション中心で初期からの集大成といった各時代の代表的な作品群で構成されている。Red Shiftと題された「赤」で統一された家具やオブジェのある部屋やBabelというナムジェンパイク風の古いラジオを沢山積み上げ音やノイズが出ている作品。最後は蝋燭一本の暗い部屋に白いタルカムパウダー(きめ細かい滑らかなベビーパウダーの一種)がどっぷりと敷き詰められ、そこを裸足で歩くなど体感型の作品が多く楽しめる内容になっている。一度に数人しかその部屋に入れないので長い行列が出来てしまい少し面倒だった。
一方Mark Rothkoの展覧会は晩年の絵画作品をフォーカスして構成されている。薄暗い大部屋に、ほぼ同サイズの大きなロスコーの絵画が壁面に少し高く沢山展示され、静粛な空間を醸し出している。ロスコーの空間は何か古いお寺の御堂の奥の様な感じがする。静かにそれらの絵画をじっと長い時間見つめていても具体的なイメージやそのマチエールの表情が見えてくることはない。何かその表面に見ようと思っても中々見えないもどかしさがあり、正体が中々つかめないので、だんだんぼーっとした感覚になってくる。さらに空間は薄暗くなっているので眼球での視覚ではなく眼球での嗅覚といった感じだろうか、以前ニューヨークのMoMAでAd Reinhardtの展覧会を見た時と似た感覚だ。二人とも同時代のアメリカ抽象表現主義のアーティストであり、この種の作品は現場空間である程度まとまって体感しないとその作品内容は十分に堪能出来ない。ロスコーは作品を美術館などに展示する際は同じ壁面に他の作家の作品を展示せず、必ずその壁に1点だけでも自分の作品だけを展示して欲しいと希望していた・・・・
http://www.tate.org.uk/modern/